文学賞投稿に代筆サービスを使ってはいけない真の理由

文学賞への応募に代筆を用いる行為は、一見すると効率的で魅力的に映るかもしれません。しかし、それは作品の本質だけでなく、あなた自身の作家人生を根底から揺るがす重大な選択でもあります。ここでは、表面的な倫理や法律論にとどまらない、「本当の問題点」に踏み込みます。

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文学賞とは「作品」ではなく「作者」を審査する場

多くの人が誤解していますが、文学賞とは単に「おもしろい作品」を選ぶ場ではありません。特に新人賞においては、作品と同時に「作者そのもの」を見るという審査スタンスが一般的です。

書いた人がどのような背景を持ち、どんな思想で書いたのか。次回作を継続的に書ける人間か。編集者が育てる価値のある人材か。つまり、文学賞は「書かれた作品」だけでなく、「これから書くであろう人物」としてのポテンシャルを審査する制度なのです。

代筆がもたらす「幻想」とその危険

代筆を利用すれば、たしかに文章はプロの手によって整えられ、読者を惹きつける構成にもなります。ですが、そこには重大な問題があります。それは、「あなたが書いたのではない」という一点に尽きます。

受賞作として世に出る作品は、単なるフィクションではなく、あなたの「文体」や「思想」を体現するものとして扱われます。つまり、代筆を通して提出された作品は、読者や編集者に「あなたはこういう人間だ」と誤解を与えるのです。

その誤解は、のちのちあなたの創作活動に深刻な影響を及ぼします。自分が生み出したものでない作品が評価されたとき、人は深い自己否定感を抱くようになります。「あの文章を書いたのは、自分ではない」――この事実は、やがて創作への意欲や自尊心を根こそぎ奪っていきます。

代筆を使って得た評価には、自らの足でたどり着いたという実感が伴いません。やがて「本当は自分には書けない」という疑念が心を蝕みます。表向きには成功していても、その影には常に「バレたら終わり」という不安がつきまとうのです。

さらに恐ろしいのは、周囲が自分を「才能ある作家」として扱い始めたときです。次の作品を求められたとき、もう逃げ場はありません。最初の一作を代筆に頼ってしまったがために、自分自身で次を生み出せないという現実に直面することになります。

誤魔化しで得た称賛は、後になって必ず重荷に変わります。それは作品への評価ではなく、自分への過大評価として跳ね返ってくるのです。そしてそれは、創作意欲すら奪っていきます。「自分は本当は何も書けない」という囁きが、静かに、確実に、心を蝕んでいくのです。

受賞してから始まる、より深い地獄

たとえ代筆で受賞できたとしても、その成功は「偽物の自分」を前提に築かれたものです。編集部との打ち合わせ、インタビュー、トークイベント、連載の打診、そして第二作目の執筆依頼。これらすべてに対して、あなた自身が応える必要があります。

そのとき、どうしますか？もう一度代筆を頼みますか？それが何度も続けられるでしょうか？いずれ、あなたの実力との乖離が露見する瞬間が訪れます。受賞者という「肩書き」だけが先行し、あなたの内側は空洞のまま。これは、成功とは言えません。むしろ、それは誰にも相談できない孤独な地獄の始まりです。

どうしても書けないなら、こう考える

書きたい物語はある、けれど文章にする技量がない。その気持ちは理解できます。代筆サービスはそうした方々を支えるために存在しています。けれど、文学賞はその対象ではありません。受賞とは、あくまで「あなたが書いた」ことに意味があるのです。

それでも「自分の物語を誰かに伝えたい」という強い思いがあるのなら、それは自費出版やウェブ連載、小説投稿サイトなど、他の形で実現する方法があります。代筆を用いた出版も、堂々と自己表現の場として成立します。文学賞という制度に無理やり当てはめる必要はないのです。

「あなたが生んだ」と自信を持てる作品。それが、作家としての第一歩であり、本当の誇りです。

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文章代筆さくら文研

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