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年賀状や暑中見舞い。頂き物へのお礼。旅先でお世話になった方への感謝。
シンプルな挨拶の手紙を書く場面で、多くの方が立ち止まります。
書くことは決まっていて、問題なく記せるのだけど、なんだか素っ気ない。
いい手紙は、いいフレーズを持っています。当たり前の中に光るひとこと。それが単なる社交辞令を活き活きとさせ、読む人に鮮やかな印象を与えるのです。
手紙の印象を決めるのは、文章量ではありません。心に残る一言。今回はそのテクニックに着目してみました。
◆このページのコンテンツ
多くの手紙は、丁寧です。失礼もありません。それでも印象に残らない。理由は単純です。
相手でなくても成立する文章だからです。
読み手は無意識に見ています。この手紙は、自分に向けられているか。それとも誰にでも当てはまるか。後者だと感じた瞬間、記憶からこぼれ落ちます。
人が後から思い出すのは、文章そのものではありません。読んだときの空気。距離感。含み。最後に残った感触です。その役割を担うのが、結びの一言です。
「今後ともよろしくお願いいたします」「心より感謝申し上げます」。これらは悪い表現ではありません。安全で、便利です。
ただし、役割は限定的です。関係を壊さないための言葉であって、関係を進める言葉ではありません。
全文が定型文で構成された手紙は、差出人の輪郭が見えません。ほんの一箇所でいい。相手と自分だけが分かる視点を差し込む。その余地がない点が問題です。
印象に残る一言は、うまい表現ではありません。個別性があります。
これらのどれかに、そっと触れている。それだけで手紙は特別なものになります。
共有された記憶は、説明しなくていい。むしろ説明すると野暮になります。断片だけ置く。その潔さが、大人の手紙には必要です。
書き始める前に考えてください。
この人と、自分だけが覚えている場面は何か。
会話の端。沈黙。笑った瞬間。天気。匂い。そうした要素を一つ選び、感情を言い切らずに置く。それだけで一言になります。
その一言が正しいかどうかは重要ではありません。本人同士にだけ通じるか。それが基準です。
以下は、定型文の流れを崩さずに差し込める一言です。共通しているのは、共有された記憶や感覚にだけ触れている点です。
「あの話で笑った年明けを、今年も思い出しました。」
具体を語らず、二人だけの時間を呼び起こします。
「選ぶ時間まで含めて、ありがたく受け取りました。」
物ではなく、相手の行為に焦点を当てています。
「あの静かな朝の空気は、今も忘れられません。」
説明を省き、記憶を共有します。
さらりと書ける一言ほど、実は判断が要ります。迷いが出るのは自然です。違和感が残るときは、その感覚を無視しないでください。整える余地があります。
短い手紙ほど、代筆は力を発揮します。言葉を増やすためではありません。削り、残すためです。
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